面接は、話題こそそれなりに的外れなものではなかったけれど、まるで面接らしい雰囲気ではなく、ただ「話しをしましょう」と言った高井の言葉どおりに力の抜けた会話で時間が過ぎていった。会社に入社するまでの学生生活のこと、この会社に就職したいきさつ、日々の仕事の中で思っていること、ジュエリーについて。休日の過ごし方は?
 高井に促されるまま、なんとなく吸い込まれるように話をしながら、遥は時々、私はどうしてこんな話をしてるんだろう?と心の中で疑問符を浮かべていた。それでも、高井の相槌は適切で、テンポは心地よく、居心地の悪さはまったくなかった。むしろ居心地がよく、この人が企画宣伝部長一押しのやり手と言われることがなんとなく理解できた気がした。
 15分ほど経過したところで、高井は不意に、何気なく、唐突に本題に入った。
「最初に上から呼び出されて今回の企画のプレ会議をやったときに出た意見の大半はね、よくどこかの結婚式場やデパートで催されているような展示会やブライダルショーみたいなものばかりだったんですよ。そこそこのモデルクラブかなんかからモデルを呼んでね。でもそんなのはまったく新たな企画には値しないものだし、そこら中にあふれていて面白味もない、興味もそそられないでしょう」
「そうですね」
「でも、従来と違った趣向にすればするほど、資金がかかるでしょう。予算がそんなに取れないからあまり大きな企画はできないから仕方ないんだ、って言われたんですよ。だったら、と考えたんです」
「はい」
 遥が心から相槌を打ち、思わず身を乗り出すと、高井は満足そうに自分も身を乗り出し、子供のような目をして続けた。

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